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脳はとても面倒くさがり ~効率を求める脳の特性~

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脳の機能を考えるとき、脳はとても複雑でとんでもなく高性能なコンピュータと捉えるのではないでしょうか。
筆者もずっと超高性能コンピュータと捉えてきましたし、今も脳は素晴らしい機能を持っていると思います。
しかし、施術をしていくときには、この緻密な性能を理解しつつ、全体としての機能を理解することが重要と考えています。
つまり、脳内にある夫々のミクロ機能を詳細に渡って考えることも
大切ですが、ざっくりとでいいので、脳が何をしたいのかを考えることが臨床的ではないかと考えています。
これらについて、私見を述べてみたいと思います。

    脳は情報処理を行う場

脳が持つ重要な機能には、情報の処理があります。脳内に入ってきた情報を常に処理しています。
当然、情報が無ければ情報処理はできませんので、情報が入らないと脳は活動できません。
脳はいつも情報を待っているわけです。

心理学の実験にありますが、人は暗闇で無音状態に置かれると、数日で精神的に耐えられなくなります。
つまり、常に脳内に情報が提供されることによって、脳の機能は正常な状態に維持されるともいえるでしょう。
また、脳に入ってきた情報は必ず処理されており、処理されないことはありません。

例えば、街の喧騒の中で、お友達と会話をしているとしましょう。
会話の音声と同時に、街中に存在する多くの音声情報や視覚情報、所謂、五感の情報が脳内に入ってきます。
脳はそれらの多くの情報の中から、お友達の声だけを増幅して聞き取りながら、不要な情報を遮断することができます。
このことは、全ての情報を一度認識して、重要度を決めたら優先順位の高い情報だけを拾い上げて、
優先順位の低い情報は意識させない処理がされているということです。

もしも、情報処理の全てが処理されるわけではないと仮定するならば、処理されていない情報は、優先順位がつけられませんから、
優先順位の高い情報と同じように意識されて会話の妨げになるか、
逆に全く認識されずに無かったことにされるか、ということになります。

全く認識されないと仮定すると、会話に不要な音声情報で突発的な事故を教えてくれるような情報を無視してしまうことになりますが、
実際にはそのような音声を検知すると、脳は瞬時に音の発信方向に意識を向け、何が起きたかを確認し、
その場が安全か否かを確認することになります。

ですから、脳は常に入力された情報を余すことなく処理していると考えてよいでしょう。

    脳はコンピュータ

現在一般的に使用されている古典コンピュータは、計算処理方法が0又は1の2進法を利用して計算をしています。
つまり、0 , 1信号(2進法)で処理されている集積回路がコンピュータとなります。

実は、このモデルは脳の神経と似ています。
神経細胞(ニューロン)の基本的な構造は、神経細体とそこから長く伸びる神経線維、
神経細胞から枝のように数多く伸びる樹状突起から構成されています。
この神経繊維と樹状突起が繋がって大きなネットワークを形成しています。
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 神経が活動するとき、神経線維を電流が流れます。
 この電気活動は、「最大電流の数割だけ電気を流す」といった活動電流量を
 調整することはできません。
 神経線維を伝わる電気は活動が「有る」か、又は「無い」かの選択肢になります。
 つまり、「0」又は「1」のどちらかということになります。

 この形式は、我々が通常使用する古典コンピュータと同じ構造といえますから、
                   脳はコンピュータと捉えることができるでしょう。

コンピュータと脳は、同じもののように捉えにくいかもしれませんが、原理的には同じといえます。
筆者は情報科学の専門家ではないので、専門的な説明はできませんが、コンピュータと脳の違いは、
それらの情報処理の形態として考えており、コンピュータは直列情報処理であり、脳は並列情報処理をしていると認識しています。
このようにコンピュータと脳を捉えると、イメージしやすいのではないかと思います。

    脳は効率を求める面倒くさがり屋

さて、脳はとても多くの情報を処理する高性能コンピュータとお伝えしてきましたが、
導入でもお伝えしたように、ざっくりと考えてみましょう。

脳は常に情報を処理しているわけですが、これは最効率化を図るために行っていると考えています。
要は「無駄」を省くために、入力された情報を利用して、常に運動の効率をよくすることを目的としています。
ですから、脳内に入ってきた情報で、効率化が図れる情報は直ぐに採用されます。

ある筋が硬くて収縮しづらい状況であるため、筋の情報が脳に伝達されにくい状況であるとします。
このままでは、脳のこの筋に関する認識に変化は起こりません。
しかし、ストレッチ等で筋を柔らかくすることにより、筋が収縮しやすくなり、
筋の状態が変化したという情報を脳に伝えることができます。

すると、脳はこの情報をもとに運動、つまり重心を動かすための効率化を行うために、いま新たに得た筋の情報が有益か否かを判断します。
脳がこの筋は効率化に有益と判断すると、運動時にこの筋を使用することを選択します。
この反応はストレッチ等筋の状態の情報を得た直後に生じます。
なぜならば、脳は常に効率化を図る目的で情報処理をしていますから、有益な情報にはすぐに飛びつきます。

実は、第8回「痛くないストレッチの方法」はこの脳の機能を利用したストレッチ方法です。

要するに、脳は「最小の労力で最大の効果を得るために何を選択したらよいのか」の答えを導くために、
常に情報処理をしているということになります。

無駄なことはしたくない。
謂わば、究極の面倒くさがり屋です。

    身体の廃用と機能向上

しかしながら、この脳の効率化の選択は、恩恵を受けることばかりではありません。
費用対効果を考えますから、効果を必要としなくなれば、費用を掛けなくなります。

必要と判断されなくなると、そこにかかる労力を削るわけですから、
活動量が減るとその活動量に見合った筋量にまで筋量を減少させることを意味します。
寝たきりになると筋が痩せて動けなくなるメカニズムがここにあります。

加えて、心臓や血管も筋でできています。
運動量や活動量が減ることによって、心機能低下や循環量の低下が生じ、少しの運動でも息切れしやすくなります。
逆に、必要なものは削減しないわけですから、日々の活動を維持することで身体機能を維持することが可能になりますし、
活動量が増加すればその増加量に見合った筋の肥大や新機能の向上が期待できるというわけです。

できるだけ身体機能を低下させないため、早期リハビリの実施が重要視されてきた背景がここにあるわけです。



Commented at 2018-07-13 14:23
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by shintai-naiatsu at 2018-07-14 12:35
> yutococoaさん
コメントいただき、ありがとうございます。

さて、ご質問の膝下の創部に関してですが、基本的には柔らかくすることが原則です。
マッサージも効果的だと思います。
その時に、筋や皮膚が本来あるべき位置でマッサージするとより効果的です。
傷や筋は足先方向に向かってテンションがかかります。放っておくと、本来の位置からズレて下方に下がってしまいます。
マッサージの前に、先ずこれらを股関節側に戻して皮膚が突っ張ったところから、マッサージすると効果的です。
痛みを伴う方法ですから、痛みの強さはマッサージの強さで加減をしてください。

うまくいくことをお祈りいたします。
by shintai-naiatsu | 2018-07-07 10:47 | Trackback | Comments(2)