2017年 08月 08日
筋の役割とストレッチの効果
筋の役割って何だろう
筋(筋肉)の役割と聞くと、「関節を動かす役割」と思う方が多いと思います。事実、関節を動かす役目を担っています。
しかし、実はそれだけではありません。もう一つ、大切な役割を持っています。
それは、感覚器(感覚情報を脳に提供する器官)の側面を持っているということです。
筋の中には筋紡錘という筋の長さに関する情報を提供する器官があります。
これによって、筋の長さに関する情報が脳に提供され、脳ではその情報をもとに、
関節の位置の情報として長さの情報を変換しています。
つまり、脳は筋から長さの情報をもらうことで、「ある関節が何度の角度で曲がっていますよ」
という情報を得ていることになります。
この情報があることで身体全体の関節の情報を集めて、脳でコントロールすることができるのです。
ここで筋の長さの維持に関して考えてみましょう。
ある筋は自ら収縮することで長さを短くして、関節をある方向に動かしますし(ある関節運動を主動する筋:主動作筋)、
その関節を反対の方向に動かす筋(拮抗作用を持つ筋:拮抗筋)の活動で反対方向に動かされると、主動作筋は伸ばされて
長さが長くなります。
重要な点として、筋は自ら収縮して短くすることはできても、自らの作用で自らを長くすることはできないのです。
イメージとしてはゴムを想像してもらうと良いのではないかと思います。
ゴムは縮むことはできますが、自分で伸びることができないのと似ています。
つまり、伸ばしたい筋があったら、その筋以外の作用や外力によって伸ばしてあげる必要がでてきます。
筋の理想的な状態とは
次に、筋の理想的な状態について考えてみたいと思います。
筋は常に一定の張力(収縮しようとする力)があるため、伸ばさないと筋の質は硬く、長さは短くなってしまいます。
これは、一晩寝ると生じてしまいます。
ご年配の皆さんが朝公園などで柔軟体操をして筋を伸ばして、柔らかく、使いやすい状態にしてから、
一日を始める理由はここにあります。
また、毎日、身体を使っているスポーツ選手でも、一晩寝ると筋は固く短くなるので、この状態では怪我をしやすくなってしまいます。
ですから、入念なストレッチを毎日行うわけです。
このことから、筋の状態としては、柔らかく、長さを長くして収縮しやすい状態が理想的と言えます。
収縮しやすい状態の筋は関節運動を効率的に行うことができますし、同時に、より正確な筋の長さの情報を脳に送ることができるため、
脳では関節の位置情報をより正確に得ることができ、脳が身体を管理しやすい状態ができるのです。
以上のことが、「ストレッチがどうして効果があるのか」についての理由になります。
短く硬かった筋は、柔軟体操やストレッチをすることで筋自体が長く柔らかくなり、筋の収縮力がより得られるようになり、
運動しやすくなります。
それに加えて、筋の状態が収縮しやすくなったことで、より正確な筋の長さの情報を得ることができた脳は、
その状態を「気持ちがいい」として意識させてくれるわけです。
柔軟体操をしているときは、多少痛みを伴いますが、終わった後に「気持ちがいい」と感じるのは、
実は、脳が喜んでいるからということになります。